労務問題
企業が従業員を雇用している以上、 労務問題は避けて通ることはできません。労務トラブル
企業が従業員を雇用している以上、労務問題は避けて通ることのできません。また近年は労働者の権利意識も向上し労使間のトラブルは増加傾向にあります。またトラブルの内訳も未払い残業代や手当の請求トラブルや雇用に関する問題(雇用、内定取り消し、試用期間、配置転換、出向、解雇など)、労働環境(安全衛生、過労死、パワハラ、セクハラ)と多岐にわたります。
こうした問題は従業員に不平や不満があっても問題を起こして職場にい辛くなったり、職を失いたくない気持ちから公にしなかったこともあり、これまではあまり表面化することはありませんでしたが、昨今の労働環境改善の機運の高まりと同時に国も労働環境が劣悪な企業名を大々的に発表する姿勢をみせるなど、企業も労務コンプライアンスの意識を持たねばならない風潮が高まってきたといっても過言ではありません。
労務コンプライアンス
労務コンプライアンスは労働関係の法令の遵守を意味し人権尊重、雇用契約、労働時間、賃金、安全配慮義務、健康管理などで構成された各種労働法に則った経営・マネジメントが行われているかを見るものです。
労働関係の法律
法 律 | 内 容 |
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労働基準法 | 労働時間、有給休暇、36協定、就業規則など、労働条件の最低限の基準を定めたものであり、この基準を達しない箇所の労働契約は無効となります。 |
労働契約法 | 就業形態が多様化に伴い、労働契約(締結、継続、変更、終了)、労働条件などについて労働者と使用者の双方の十分な理解と合意の上で決定・変更することで、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することを目的としたもの。 改正労働契約法で有期労働契約のルールも加わった。 |
労働安全衛生法 | 職場の安全管理体制や従業員の健康診断など、従業員の安全と健康を守り、労働災害を防止することを目的とした法律。 |
労働者災害補償保険法 | 業務上の理由または通勤時の災害により、労働者が負傷を負ったり、疾病にかかった場合、障害や交渉などが残った場合、死亡した場合などについて、被災労働者又はその遺族に対し必要な保険給付を行い、あわせて、被災労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護、労働者の安全及び衛生の確保等を図り、労働者の福祉の増進に寄与することを目的とする法律。 |
最低賃金法 | 事業若しくは職業の種類又は地域に応じて、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的として制定された法律。 |
パートタイム労働法 | 正式には「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」といい、パートタイム労働者の労働条件の確保、雇用管理の改善など、通常労働者との均衡のとれた待遇の確保等を図ることを通じて、短時間労働者の福祉の増進を図ることを目的した法律。 |
男女雇用機会均等法 | 雇用における男女の均等な機会と待遇の確保のため、また女性労働者の就業に関して妊娠中及び出産後の健康の確保を図る等の措置を推進することを目的した法律。 |
育児・介護休業法 | 育児又は家族の介護を行う労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるよう支援することによって、その福祉を増進するとともに、あわせて我が国の経済及び社会の発展に資することを目的とした法律。 |
次世代育成支援対策推進法 | 次世代を担う子供達が健やかに生まれ・育成される環境の整備を行うための法律。従業員数101人以上の企業はこの法律に対する取り組みの具体案を明記した「一般事業主行動計画」を厚生労働省へ届出する事が義務付けられている。 |
職業安定法 | 求人時の見込み賃金、労働条件の明示義務など職業紹介事業に関する基本的なルールを定めた法律。 |
雇用対策法 | 労働者の職業の安定と地位向上を図り、国民経済の均衡ある発展と完全雇用の達成を意図した法律。相当数の離職者が発生する場合は、「再就職援助計画」提出する義務、求人における年齢制限の禁止など |
高齢者雇用安定法 | 少子高齢化の急速な進展に対応し、高年齢者の雇用の安定を図ることを目的として、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律。60歳などで定年を迎えた社員のうち、希望者全員の65歳までの継続雇用制度の導入を企業に義務付けるなど |
障害者雇用促進法 | 身体障害者又は知的障害者の雇用義務等に基づく雇用の促進等のための措置。事業主に対し、障害者雇用率(法定雇用率)に相当する人数以上の身体障害者・知的障害者の雇用の義務づけ等 |
労働者派遣法 | 正式名称は労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律。就業条件の整備や、労働現場での権利を確保など、派遣労働者の保護を目的とした法律。 |
雇用保険法 | 労働者が失業した場合や労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合には必要な給付を行うほか、労働者が自ら職業に関する教育訓練を受けた場合に必要な給付を行うことにより、労働者の生活及び雇用の安定を図るとともに、求職活動を容易にする等その就職を促進し、あわせて、労働者の職業の安定に資するため、失業の予防、雇用状態の是正及び雇用機会の増大、労働者の能力の開発及び向上その他労働者の福祉の増進を図ることを目的とした法律。 |
健康保険法 | 労働者の業務外の事由による疾病、 負傷若しくは死亡又は出産、 及び、 @その被扶養者の疾病、 負傷、 死亡又は出産に関して保険給付を行い、 もって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とした法律。 |
国民年金法、厚生年金保険法 | 国民年金制度、厚生年金保険制度について定めた法律。国民年金法では、老齢、障害、死亡により、生活の安定が損なわれるのを防止する目的の法律。厚生年金保険法は、日本の民間企業の労働者が加入する年金保険について定めた法律。 |
残業問題
未払い残業代の請求は、近年の労務問題の中でも最も多いトラブルです。
会社に残業代を請求する場合の手段として以下の3通りがあります。- 労働基準監督署に申告して残業代の請求するケース
- 合同労働組合を経由して残業代の請求するケース
- 弁護士などを通じて内容証明を送り残業代請求するケース
労働基準監督署からの是正勧告
従業員や退職者から申告を受けた労働基準監督署から労働基準監督官が派遣され、立入調査を実施します。調査の結果、未払いとなっている残業代が発覚すると会社に対し未払い分の残業代を支払うよ是正勧告を発せられ、同時に他の問題点も発見された場合は、その部分に対しても是正勧告が発せられます。労働基準監督署から是正勧告に応じない場合は罰則があり6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処されます。
最近では労働基準監督署の監督官が期待通りの対応してくれないケースも多く、弁護士を通じて残業代を請求するケースが増えています。
労働組合を通じて残業代請求
従業員や退職者が合同労組やユニオンなどの労働組合に加入して未払い残業代を請求してくることもあります。労働組合の基本は団体交渉にあります。労働組合から団体交渉の申し入れがあると正当な理由がないのに団体交渉を拒否することはできず、未払い残業代の支払額や方法などについて交渉を重ねていくことになりますが、交渉が決裂した場合は労働審判や労働訴訟へと発展する可能性は高くなります。
内容証明、示談交渉による請求
弁護士を通じて残業代の支払いを求める内容証明が会社宛に送られてくる場合があります。この場合は従業員の代理人である弁護士と支払いに対して交渉を進めていくことになりますが、会社側が直接交渉に応じるより会社も弁護士を立て、お互いが対等な立場に立って交渉を行うことが大切です。実際に弁護士同志による交渉では和解で解決するケースも多くあります。
労働審判、労働訴訟
交渉が決裂した場合には 裁判所を通じた請求へと発展する可能性があります。特に裁判となればかなりの労力と費用の出費も覚悟しなくてはなりません。また裁判で支払い命令が出た場合には、本来の支払日の翌日から実際の支払日までの日数に応じて遅延損害金を支払わねばなりません。更に労働者の請求により本来支払うべき未払賃金の他に、付加金の支払いを命じることもあります(付加金)。
問題のある従業員の解雇
従業員を解雇処分する場合には、客観的な合理性がなければなりません。例えば、勤務態度の悪い従業員や能力のない従業員だからといって会社は簡単に従業員を解雇することはできません。会社が解雇を宣告する前に対象の従業員に対し改善の機会を十分に与えたか、また他の職務・部署への配転を検討・実施するなど雇用維持の努力を尽くしたかどうかが重要になります。また問題となっている従業員より能力や勤務態度が劣る者を不問にしていないことなど公平性も重要なポイントとなります。
ただ能力が劣る、欠勤した、勤務態度が悪いというだけで会社側が何もせずに解雇を行った場合には解雇権の乱用による不当解雇を主張される可能性があります。
未払い残業代請求トラブル
長引く不況や会社の業績の悪化などから、企業も生き残ろうと従業員にサービス残業を強いるケースが多く見られますが、その支払われなかった残業代に対し従業員から未払い賃金の支払い請求を会社に対し起こすケースが増えています。労働法上サービス残業は認められていませんの請求をそのまま放置していると労働基準監督署へ通報されたり、労働審判や労働訴訟を起こされる可能性は高くなり、その結果場合によっては労働基準監督署から是正勧告を場合(是正に応じない場合は罰せられます。)や、実際の残業代より遥かに高額な金額支払わねばならなくなる(付加金制度)可能性もあります。